誰からも好かれるはずがないという自己認識

なかなか布団から起きられなかった。

もう買って数年たった布団は少しくたっとしていて、寝心地が良いわけでもないが、起きてもやりたいことが思いつかず、いっそもうこのままぐだぐだと1日が終わってしまった方が良いのではないかと考えながらゴロゴロとしていた。

 

2時間くらいゴロゴロして、だいたい満足したくらいで布団から起き上がり、色々とタスクを片付けていく。

布団を干し、いつも着ているシャツの襟に最近買った襟用洗剤を塗りたくり、洗濯機に放り込みスイッチを押し、床に散らばるゴミ類をまとめてゴミ袋に詰め込み、ルンバのスイッチを入れ、ゴミを捨てにいく。

 

ゴミを捨てに行った時に、ふと思い立ち近くの自販機でコーヒーを買い、家の目の前にある神社にいく。

今週はとても寒かったが今日はとても暖かかった。そんな日差しの中、神社の前では工事が行われていて、カラーコーンで区切られた中では60歳くらいのおじいさんが働いていて、その肌は日に焼けて黒かった。

 

神社の境内に向かうには、急な階段と少し緩やかな階段があり、クロックスを履いている我が身を振り返り、これ途中で裾を引っ掛けて転んだら階段の下まで転がり落ちて死ぬんだろうなと思いながら、階段をのぼっていく。

 

境内には土曜日なのに、というか土曜日だから、というか人が結構いて、僕はその辺のベンチに腰掛けて、人をぼんやりと眺めながらコーヒーを飲む。

コーヒーを飲み終えたら、境内の中にある池を眺める。池のそばに立つと、鯉が大量に近寄って着て口をパクパクさせている。しゃがみこんでぼんやり眺めていると、小さな子もわきに座り込み、同じように池を眺めている。その子の親らしき人が「餌をもらえると思って近寄ってくるんだね」と子どもに話しかけている。

 

池を離れて、境内を出ようとする、登りと同じ階段を降るのは怖いので、ゆるやかな階段をぼんやりと下っていく。

 

家に帰ると、鍵を閉め忘れていたことに気づくが、特に誰も入った気配もなく、入られたとして盗られて困るもんは特にないなと思いつつ、家中のものがなくなっていたらやはり困るな、と考え直す。

 

部屋の掃除は途中だったような気がするが、自分の最低限の許容量は超えたのでもうこの程度で良いかと思う。ネットでハウスクリーニングを調べると二万円くらいでたまには利用しても良いかなと考えたりする。

 

PCを立ち上げ、2時間くらい適当にプログラムを書く。特に書きたいものがあるわけではないが、書けたら良いなと思っているものはある。MVVMパターンについて解説された本を読むが、内容は英語でイマイチ分からず、とりあえず書いてみて動きを確かめて、いつか天啓が落ちて理解できる日がくることを祈る。

 

ノルマも達成して満足したので、ネットで近くの銭湯を調べる。

歩いて20分くらいのところにカプセルホテルがあることを知り、外に出る準備をする。朝干した洗濯物は生乾きな気もするし、乾いている気もするが、襟につけた洗剤の効果があったようで、汚れは落ちているような気がする。そのことに満足して、生乾きなんだかよく分からないシャツを着て外に出る。

 

ぶらぶらと歩きながら、今日の神社の様子を思い浮かべ、絵とか書けたら素敵なことじゃないかと思ったりする。

 

着いたカプセルホテルの利用料は1時間1000円だった。受付の人に1000円と消費税を払い、初めてだと言うと、ロッカーの場所と風呂は地下一階と告げられる。

ロッカーに荷物をしまう。ロッカーを閉めた段階で、携帯と財布もしまいっぱなしだが、まぁ別に良いかと思う。

風呂は思ったより狭い気がして、まさにカプセルホテルだなと思う。とりあえず足が伸ばせれば良い。

 

風呂に入って足を伸ばして、前の会社にいるときに行われたハッカソンのことを思い出す。何も知らないおじいさん型に2年前くらいに流行った技術を使ったことをアピールするというタイムマシン的方法で技術賞を貰ったが、最優秀賞を取れなかったことを思い出す。仮に今年も出るとしたらどんなもんを作るかなと考える。

今なら前よりiOSを書けるようになっているが、機械学習もARもなんだかなぁと思ったりする。

 

風呂を入ってサウナに入る。サウナはミストサウナらしく、目の前が真っ白で何も見えなくなる。段々目が慣れてきたが、蒸気が強すぎてあまり長くいたくないな、とすぐに外に出る。

 

体の汗をシャワーで流し、もう一度風呂に入りなおす。

 

風呂を入って牛乳の自動販売機を見つける。財布をロッカーにしまったことを後悔したが、入館時にもらったIDタグをかざすだけで買えることを知り嬉しくなる。

牛乳を飲み干し、二階の漫画コーナーに上がる。

オススメ一覧からアイアムアヒーローを見つけ、最終巻を読んでいないことを思い出して、適当な椅子に座って読み始める。

 

「その人は生きている方が勝手に苦しむから」という台詞が印象に残る。

 

入館時間を覚えていなかったので、延長料金を取られるかもなぁと思いながらチェックアウトする。値段は牛乳代の130円だけだった。

 

カプセルホテルを出て、東急ハンズの場所を探す。歩いて20分。

GoogleMapで位置をみて、ざっくり方角だけ理解して歩き始める。

 

途中、横断歩道で信号待ちをしていると、中国人の人に「Excuse me」と話しかけられる。GoogleMapを突きつけられる。自分の手元でも検索し、通り沿いを200m先ということが分かったので、この通りを200m先と伝える。

中国人が日本で質問するときにExcuse meというとは、英語は世界公用語なんだな、と思う。

 

東急ハンズに着いて、入り口の階案内を眺める。階案内がオシャレなカタカナで書いてあって、どこに何があるのか全く分からない。

諦めて適当にまわるかとエレベータに向かう。

エレベータ前の階案内にはカタカナ語に配置してあるものの詳細が書いてある。

文房具はカラフルステーションにあるらしい。

 

カラフルステーションに着いて、ノートコーナーに行き、なるべくシンプルな自由帳を買う。

 

東急ハンズを出ると、もう外は暗くなっていて、何かを食べたいと思う。

ただ、何かを食べたいが食べたいものは思いつかず、駅前を3往復くらいウロウロとする。

ぼんやりと歩いていると、女の人に話しかけられる。

20代後半男性がどんなところに住みたいかのアンケートを取りたいと言われる。

身の危険を感じたが、暇なのでOKをし、道の脇に移動させられる。

 

許可もとっているので怪しいものではないですと言われ道路使用許可証を見せられる。

今後も突然話しかけられたときは、許可を取っているか確認すれば良いのかと思う。

アンケートは本当に大したことなくて、年収と家賃と住居選びで大事にすることと、今後持ち家が欲しいか賃貸が良いかを聞かれる。

年収と家賃を答え、今のところはやはり家賃が高いなぁと思ったりする。家は多分持たずにずっと賃貸だろうなと思う。

 

引き続きぼんやりとウロウロすると、シャフト原画展という看板に、マギアレコード・化物語Fateの絵がある。どれも知ってそうであまりよく知らないなと思いながら、入場料無料という文言に惹かれて建物に入り、8Fまでエレベーターで上がる。

原画展の入り口はもう封鎖されている。

そばにいた係の人に「もう終わりですか」、と聞くと、「5分前に終わりました、大丈夫ですか」と聞かれる。

「大丈夫かと聞かれたら、悲しいです」と答えると、ちょっと考えた末に15分以内に見終えるならいいですよ、と通してくれる。

 

中は化物語の原画展だった。アニメを見たことがないのでよく知らないなと思いながら適当に眺める。結局3分くらいで見終わる。

係の人にお礼を言って外に出る。

せっかくだからこの建物でご飯を食べようと思い、地下に降りる。

 

地下には牛タン屋があった。

カウンター席に座り、定番っぽい定食を頼む。

近くのテーブル席で男の人二人が会話しているのが聞こえてくる。

 

働き蜂の法則というものがあって、80%はちゃんと働くけど20%は働かないし、この20%を取り除いても残りで同じように働く奴と働かない奴が出るんだよ、ということを片方の男が言っている。

 

働き蜂にそういう性質があるからといって、人間にもそれが当てはまるという部分にはなんの論拠もないよな、と思った。

 

牛タンはとろろが美味しかった。

 

行きは歩いてきたが、帰りは電車に乗ることにした。

最寄駅で降りて、帰り道のローソンで、珍しくお酒を買うことにする。

徳島店フェアという珍しいものを見ながら、サワーとよもぎ餅を買う。

 

家についたら、よもぎ餅を食べる。あまり美味しくなくて残念。

 

Discordで大学時代の知り合いからチャットが飛んでくる。

僕が紹介したラジオの話と、仕事の話を少し。地方公務員をしていると、なぜか国に行った人は偉いという価値観があるらしい。その偉いの内訳を聞くと、どう整理しても忙しいから偉い、以外の理由を見出せない。

以前も国に行っていた人のプチ講演会があったので聞いてみたが、ただの忙しい自慢で、講演会のあとはお酌をする列ができたらしい。

 

気持ち悪い世界観だね、と返す。

 

学歴が役に立ったことはないが、無根拠な権威主義的なものがつかなかったことは良かったと彼は言う。

 

11時くらいになったので布団に入る。

布団の中で悶々と考える。今日は自分は幸福だったのかどうか。幸福とはなんだ。

友達に言われたことを考える、「そもそも人生の目的が幸せにあるとは思わないけどな」。そうかもしれない。

 

1時間くらい悶々と考えて、ふわっと脳裏に浮かんだ考えがとてもしっくりくる。

自分は「誰からも本当に好かれるはずはない」ということ。

 

他者との関係性を利益の与え合いという枠組みでしか捉えられない。自分と仲が良い人も僕といて楽しいから付き合うわけで、僕といてつまらなかったら離れてしまうんだろうな、と考えている。

自分が色々と自助努力にこだわるのも、有益・有能であることで公共としての価値があり、これが失われると人が離れてしまうだろう、という感覚があるからではないか。

 

初対面など関係性のない人との会話が苦手な理由も、相手に自分の立場から提供できる能力や知識がないとコミュニケーションの方法が分からなくなるからだろう。

 

自分の持つ、自信満々さと自信のなさとの共存も理解できる。自分の能力には自信はあるが、自分の存在自体には自信はほとんどないのだろう。

事実かどうかはともかく、そう認識しているという話である。

 

自分のことを、とても悲しい人間だなと思ったりする。

それでも自分の考え方が分かってホッとする。自分が何を考えているのか分からないのが辛いのだ。

 

次やることは、誰からも本当に好かれないなりの生き方を探すか、この考え方を改める方法を探すかのどちらかだろう。